残雪期の西穂高岳。音のない静かな世界へ


【2日目】西穂山荘➥(10分)西穂丸山➥(30分)西穂独標➥(15分)ピラミッドピーク➥(10分)西穂独標➥(20分)西穂丸山➥(10分)西穂山荘
西穂の岩稜帯を楽しむ1泊2日の山旅。
西穂山荘で1泊し、
翌朝、西穂高岳に登る計画を立て
友人と新穂高温泉に向かった。
空は晴れ渡り、駐車場から見る
北アルプスはあまりにも
存在感が大きく、
期待と興奮で僕たちの胸は高まった。
雪と岩場のミックス地帯
だったらどうしよう。
アイゼンを付けて岩稜帯を登ったり
下ったりする自信はまったくない。
どうか岩場に雪がありませんように。
そう願って「しらかば平」から
ロープウェイに乗り
西穂高口に降り立った。
登山道にはしっかり雪が積もり、
途中からアイゼンを付けて歩く。
午後2時前には西穂山荘に着いた。
まずは友人と缶ビールで乾杯!
窓から見える雪の山々を肴に、
酒を酌み交わす最高の時間だ。
本館の食堂は、程よく暗く、
山小屋らしい風情を感じる空間だ。
どこの山に登ったか、どこから来たのか
近くのご夫婦とも山談議に花が咲く。
都心の居酒屋に行って、
隣客と言葉を交わすなど
まずあり得ないが、
山では気軽に話かけることができる。
こんな場所にいると、心が開かれるのか
共通のテーマが“山登り”であるがために
親近感が湧くのか・・・
僕たちは、こんなひとときに
幸せを感じるのだ。
夕食の頃には、酔いが回り、
気持ちよくなってきた。
ご飯と味噌汁をおかわりし、
エネルギーも十分に補給した。
翌朝も天気はよく、登山日和。
山荘前から丸山方面を見ると、
完全な雪山なので、
12本アイゼンを装着してスタート。
しかし、しばらくすると雪は消え、
岩肌が露出した登山道が続く。
アイゼンを外し、丸山に到着。
この先も雪がないことを祈る。
独標が見えた。その先には尖がった
岩山のピラミッドピークも見える。
ゴツゴツした岩場を歩き、
急登をよじ登ると
丸山から30分ほどで独標に着いた。
西穂山荘から400m弱も
標高を上げてきた。
このピークで景色を楽しみ、
引き返す登山者が大多数な中、
僕たちは西穂山頂まで行きたい
思いで奥穂方面を見つめる。
独標から先はいきなり
岩場の急な下りだ。
下を覗き込むと垂直に見える。
腰を下ろし、慎重に岩をつかみながら
一歩ずつ下降していく。
下りたかと思うと登り、
足がすくむほど高度感のある
大きな岩をトラバースして進む。
尖った岩山が目の前に現れ、
全身を使ってよじ登ると、
そこが、8峰ピラミッドピークだった。
息を整え、辺りをぐるりと見渡すと
360度の展望。空は青く、風はなく、
峰々が静かに、大きく佇んでいた。
穏やかな山の頂にしばし酔いしれる。
見上げると、青空の中をトンビが
音もなく空中を舞っていた。
静かなピークだった。
こんなにも音のない世界を
僕たちは知らない。
空気が凛とし、
何の動きも感じない静かな時間。
はるか遠く7峰であろうか、
二人の登山者が歩く姿が見えた。
ピッケルが岩稜に当たる金属音が
かすかに聞こえた。
二人の会話まで聞こえてきそうな
そんな澄み切った空気の中に
僕たちはいた。
岩に腰掛け、目と耳と
皮膚感覚を研ぎ澄まして。
先を行くもの、引き返すもの、
さまざまな情報が飛び交う。
ここから先は雪交じりの岩場らしい。
アイゼンを付けて進むもの、
ツボ足で進むもの。
状況判断を迫られる中、僕たちは
この場所を最終地点と決めた。
十分だった。
この静かで幸せな時間を
いつまでも楽しんだ。
チョコレートを食べ、白湯を飲み、
1時間以上も滞在した。
夏になったら、
今度は西穂高岳山頂(主峰)まで
行ってみよう。
友人と言葉を交わし、下山路についた。


































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2023年5月2日~3日 晴れ 【距離】7.5km 【標高差】820m |
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