梅雨明けの南八ヶ岳・赤岳

梅雨明けの南八ヶ岳・赤岳

鎖が連続する県界尾根は、全身を使った岩登りが楽しかった!

ようやく梅雨が明けた。山の天気予報で午前中は晴れときどき霧とのことだったので、思い立って赤岳山行を決断した。

当初は美濃戸から入り行者小屋経由で赤岳を目指すつもりでいたが、梅雨明けの晴天ともあって美濃戸駐車場は混む。東側の清里から登ったほうがよいと登山の大先輩からアドバイスをもらい、清里の県界尾根登山口までやってきた。西側ルートよりもハードだと聞いていたが、何とかなるだろうという気持ちで臨む。

サンメドウズ清里スキー場の先にある県界尾根登山口からスタート

県界尾根登山口。ここから赤岳までの長い道のりが始まる

朝5時半スタート。最初は、沢の音が心地よい緩やかな登山道も、樹林帯に入ると激しい登りとなる。筋肉が眠りから覚めたばかりの朝一番に、この段差、この角度はじつに応える。

歩き始めは半そでのTシャツで少し肌寒く感じていたのが、一時間強登った小天狗まで来ると汗が噴き出していた。吸汗速乾性の携帯タオルで顔を拭きスポーツドリンクとマグオン(攣り防止のマグネシウム剤)を飲む。

ゆっくり休憩しながら先を行く。前方を見ると赤岳の山容がドーンと迫りモチベーションが一気に高まった。平坦な道もあり、苔むす木々を眺める余裕もあったが、再び急な登りになり五合目の大天狗まで来た。

バーナーもクッカーも持参していないので、今日のザックは6.5キロと軽めだが、それでも身体を虐める重さではある。十分に睡眠を取れていないせいか、足がどうも軽くない。そんな足に気を使いながら石尽くめの急登を越え、いよいよ本番の六合目まで来た。

小天狗。登山口から1時間50分。次の目標は大天狗
大天狗。この先は鎖場が連続する岩稜帯だ

六合目。ここからは鎖場が出現するのでヘルメットを着用する。権現岳山行の岩稜が忘れられず、岩を求めて今日を迎えた。さあ行くぞ。待ちに待ったわくわくの瞬間だ。最初に垂直の鉄梯子。他の登山者は誰もいない。ひとりでニヤニヤしながら一歩一歩登っていく。

さていよいよ鎖場が現れた。手足の置き場所を選び、鎖の道しるべどおりに進む。まだ鎖を頼らなくても大丈夫そうだ。自分の息づかいの音を聞きながら、次から次へと目の前に出現する光景に心が高揚している。ほぼ垂直に近い険しい岩壁が現れた。吊り下がる鉄の鎖を両手で握りしめて足場を探す。

ほんの少しの段差を見つけて足をかけ、腕の力で上へ進む。バランスを崩すと宙ぶらりんになって体を左右に振られるので、ここはゆっくりと慎重に。ガレて手がかりや足場が崩れやすい。どうしても鎖に頼らざるを得ないが、進むうちにバランスも取れ慣れてきた。

鉄の長い梯子を過ぎると、また鎖の連続だ。楽しさと怖さが行ったり来たりする。周りを見るとガスが出ていて景色は真っ白だ。見上げると小さく赤い屋根が見えた。頂上山荘だ。

攣りそうな足をかばいながら、鎖を握る腕に力を入れる。目の前の脆そうな赤い岩肌を一気に登り切ると、頂上山荘の裏手に出た。山頂はもう目の前だ。

鉄梯子が登場。安定していて恐怖感はない
鎖場登場。手がかりや足場はあるので登りやすい
岩を落とさないように注意しながら慎重に登る
垂直に近い壁。鎖をしっかり握って足をかけていく
急斜面の鉄梯子、しっかり、ゆっくり
山頂近くはかなりの急登。あともう少し
赤くて脆い岩。山頂まで気を抜かずに進む
頂上山荘の建物が見える。焦らず、ゆっくりと
中岳、阿弥陀岳が目の前に見える。登山道もはっきりと
雲がうごめく。眼下に見えるのは赤岳天望荘
キレット分岐に向かう岩稜帯。こういった場所は楽しい
山頂直下。ゴツゴツと岩がカッコいい
赤岳天望荘側から登ってくる登山者が見える。稜線がずっと続いている

9時20分。八ヶ岳の最高峰、赤岳2,899m登頂。

ついに来た。記念写真を一枚。西側の中岳、阿弥陀岳がくっきりと見え、その向こうには雲海が。赤岳展望荘の先はガスがかかっているが、横岳、硫黄岳が少しだけ顔を見せている。

赤岳天望荘から赤岳までの稜線には多くの登山者が歩いているのが見える。県界尾根ではひとりの登山者とも会うことはなかった。

登山初心者をこんなにも熱くさせた尾根に心から感謝したい。     

さて、まだ早いが、お昼ご飯を食べてのんびりと下山しよう。

赤岳山頂で記念写真。清々しい青空だ

2020年8月2(日) 曇りのち晴れ
【ピストン山行】県界尾根登山口→小天狗→大天狗→赤岳山頂