梅雨時の南八ヶ岳・権現岳
- 2022.06.12
- 登山紀行

大雨からの決行。雲海から天にそびえる剣に感動!
さて、今日の山行はどうしようか。
せっかくの日曜日なのに早朝から雨が降っていて登山という感じではない。しかし山の天気予報と睨めっこしながら、昼から雨が止むとの情報を確認すると、もうじっとしていられなくなった。
中央道を突っ走り小淵沢インターで降り、観音平駐車場までやってきた。朝の6時。ボンネットに打ちつける音がうるさいほどの雨に、なかなか外に出る決心がつかなかったが、勇気を振り絞って登山開始を決行した。

樹林帯をひたすら登る。雲海、押手川を通過。今のところレインウェアは雨粒を弾き、何の問題もない。この先どんな展開になるか予想がつかない中、山道を踏みしめ、青年小屋を目指す。雨に濡れた木々の葉や岩肌の苔がとてもみずみずしく鮮やかに輝いている。何人かの下山者とすれ違うが、登る者は見かけない。
本当に雨は止むのだろうか。大きな岩と岩の間に水が溜まり小さな池のようになっている。それをうまくかわしながら岩から岩へ飛ぶように歩を進める。新品のアプローチシューズは中までぐっしょり濡れている。キャップのつばから雨粒が垂れ、身体は少し汗ばんできた。
岩に書かれた赤い矢印を頼りに前へ進む。次から次へと展開される周りの景色や足場の変化を楽しみながらガレ場の急登を過ぎると青年小屋が見えてきた。左手にはゴツゴツした岩で覆われた編笠山の円すい形の山容。雑誌やYouTubeでは見たことがあったが実際に出会うのは初めて。まるで芸能人にでも遭遇したかのような感動を覚えた。







青年小屋でひと休みし、目的の権現岳を目指す。ここからは樹林帯を抜け、岩稜帯の急登が続く。気がつくと雨は止み、陽が出てきていた。矢印を見逃さないように慎重に駒を進める。のろし場に着いた。標高2,530m。後ろを振り返ると、編笠山と小さな青年小屋が見えた。前方には堂々たる山容のギボシ、その向こうにギザギザ岩の尖った権現岳が見える。あこがれの山頂を目の当たりにして気合いが入る。
ここから先はガレとザレの岩場が続く。鎖のあるトラバースを歩きながら、いま自分ひとりがこの山にいて、偉大なる山の神に迎えられているような心躍る気分になる。前にも後ろにも登山者の姿はない。普段の暮らしでは発しない独り言を喋っている自分に気づく。うわっ、すごいぞ・・・。そんな声を山は温かく聞いてくれているようだ。





ギボシの険しい岩稜を越えると、権現小屋が見えてきた。雲が下から勢いよく湧き上がって雲海を作り、山肌を隠すようにさらに上昇してきた。天気が急転する前に権現岳に着きたい。その一心であと一息頑張ろう。山頂はもう目の前だ。
天に突き刺すような尖った山頂を見ながら、そしてうごめく雲海を下に見ながら、息を落ち着かせて足早に道を踏みしめる。今この時この景色を見ているのは世界でたった一人、自分だけだ。まさに一期一会とはこのことだと噛みしめる。
ついに来た。標高2,715m権現岳山頂。大きな岩が積み重なった狭く神々しいまでのその一角には重厚な錆びた剣が天を指し、雨の中、勇気を持ってここまで来た私を称えているように見えた。











2020年6月28日 雨のち晴れ |
<周回コース> 観音平駐車場 ⇒ 青年小屋 ⇒ ギボシ ⇒ 権現岳 ⇒ 三ッ頭 ⇒ 観音平 |
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