梅雨時の南八ヶ岳・権現岳

梅雨時の南八ヶ岳・権現岳

大雨からの決行。雲海から天にそびえる剣に感動!

さて、今日の山行はどうしようか。

せっかくの日曜日なのに早朝から雨が降っていて登山という感じではない。しかし山の天気予報と睨めっこしながら、昼から雨が止むとの情報を確認すると、もうじっとしていられなくなった。

中央道を突っ走り小淵沢インターで降り、観音平駐車場までやってきた。朝の6時。ボンネットに打ちつける音がうるさいほどの雨に、なかなか外に出る決心がつかなかったが、勇気を振り絞って登山開始を決行した。

<周回コース> 観音平駐車場 ⇒ 青年小屋 ⇒ ギボシ ⇒ 権現岳 ⇒ 三ッ頭 ⇒ 観音平

樹林帯をひたすら登る。雲海、押手川を通過。今のところレインウェアは雨粒を弾き、何の問題もない。この先どんな展開になるか予想がつかない中、山道を踏みしめ、青年小屋を目指す。雨に濡れた木々の葉や岩肌の苔がとてもみずみずしく鮮やかに輝いている。何人かの下山者とすれ違うが、登る者は見かけない。

本当に雨は止むのだろうか。大きな岩と岩の間に水が溜まり小さな池のようになっている。それをうまくかわしながら岩から岩へ飛ぶように歩を進める。新品のアプローチシューズは中までぐっしょり濡れている。キャップのつばから雨粒が垂れ、身体は少し汗ばんできた。

岩に書かれた赤い矢印を頼りに前へ進む。次から次へと展開される周りの景色や足場の変化を楽しみながらガレ場の急登を過ぎると青年小屋が見えてきた。左手にはゴツゴツした岩で覆われた編笠山の円すい形の山容。雑誌やYouTubeでは見たことがあったが実際に出会うのは初めて。まるで芸能人にでも遭遇したかのような感動を覚えた。

登り始めて約1時間。雲海展望台。本日展望はなし
雲海展望台でひと休み。広場になっていて休憩用ベンチもある
八ヶ岳らしい苔と岩。雨の中、いい感じの森の景色
朽ちた倒木もまた苔たちの住まいになる
雨に濡れて、びっしょりの苔たち。なんだかうれしそうだ
苔が輝いていて綺麗。十分な水分を得て、光合成による生命活動中
編笠山。なだらかな山容、ゴツゴツした岩。今回は登らずスルー

青年小屋でひと休みし、目的の権現岳を目指す。ここからは樹林帯を抜け、岩稜帯の急登が続く。気がつくと雨は止み、陽が出てきていた。矢印を見逃さないように慎重に駒を進める。のろし場に着いた。標高2,530m。後ろを振り返ると、編笠山と小さな青年小屋が見えた。前方には堂々たる山容のギボシ、その向こうにギザギザ岩の尖った権現岳が見える。あこがれの山頂を目の当たりにして気合いが入る。

ここから先はガレとザレの岩場が続く。鎖のあるトラバースを歩きながら、いま自分ひとりがこの山にいて、偉大なる山の神に迎えられているような心躍る気分になる。前にも後ろにも登山者の姿はない。普段の暮らしでは発しない独り言を喋っている自分に気づく。うわっ、すごいぞ・・・。そんな声を山は温かく聞いてくれているようだ。

青年小屋。登り始めて3時間10分。ザックもびっしょりだ
のろし場。見晴らしがいい。正面にギボシ、右手に権現岳が見える
振り返ると、青年小屋、そして編笠山が見える
ザレた岩場の急登。ゆっくり慎重に、岩を落とさないように
雲海が素敵だ。下からもくもくと湧いてくる

ギボシの険しい岩稜を越えると、権現小屋が見えてきた。雲が下から勢いよく湧き上がって雲海を作り、山肌を隠すようにさらに上昇してきた。天気が急転する前に権現岳に着きたい。その一心であと一息頑張ろう。山頂はもう目の前だ

天に突き刺すような尖った山頂を見ながら、そしてうごめく雲海を下に見ながら、息を落ち着かせて足早に道を踏みしめる。今この時この景色を見ているのは世界でたった一人、自分だけだ。まさに一期一会とはこのことだと噛みしめる。

ついに来た。標高2,715m権現岳山頂。大きな岩が積み重なった狭く神々しいまでのその一角には重厚な錆びた剣が天を指し、雨の中、勇気を持ってここまで来た私を称えているように見えた。

権現小屋、その向こうにギザギザの権現岳山頂が見える
振り返れば、雲がうごめく堂々としたギボシが見える
権現小屋。2020年、2021年は休業
編笠山の向こうには、南アルプスが見える
権現小屋の脇から見える権現岳山頂
雲海からそびえる権現岳。じつにカッコいい
権現岳山頂の錆びた剣。岩の上に鳥が・・・
三ッ頭。広いのでゆっくり休憩できる。見晴らしもいい
三ッ頭山頂の標識。山々を眺めるにはよい場所だ
権現岳の後ろには、雲の中に赤岳、中岳、阿弥陀岳が見える
富士山も雲の中から頭をのぞかせている

2020年6月28日 雨のち晴れ
<周回コース> 観音平駐車場 ⇒ 青年小屋 ⇒ ギボシ ⇒ 権現岳 ⇒ 三ッ頭 ⇒ 観音平